
デンタルインプラントの試みは、他にも世界の各地で見つかる。中国やエジプトでは象牙の歯が植えられた人骨が発見されており、古代ギリシャでは権力者が奴隷の歯を引っこ抜いて我が物にするという乱暴な試みがなされていたという記述もあるらしい。
16世紀に日本の木製総義歯が作られた辺りからだろうか、デンタルインプラントよりも入れ歯が義歯の中心になっていったようだ。何かを埋め込んで歯の代りにすることが、案外困難であることがわかってきたのだろうか。そういう意味でも、5世紀マヤ文明における天然歯と貝の義歯がいかにズバ抜けた存在であるかがわかるというものだ。
もちろん、その後もデンタルインプラントの試みが完全にストップしてしまったわけではなかろう。整形外科の進歩と共に、その分野で用いられるコバルトクロム合金を人工歯根に応用するような試みもなされた。
しかし、決定打がないまま、ついに20世紀を迎える。
現代のデンタルインプラントに至るにはまだまだ決定的な見識が欠けていたのだ。